σ-π共役型ポリマーは、従来のπ共役ポリマーとは異なる全く新しいタイプの共役ポリマーとして興味がもたれている。これらのポリマーでは、溶解性、光応答性、正孔輸送性、熱安定性に優れているσ共役ポリマーとして知られるポリシランに、光および電子的に特異な性質を有するπ電子系を組み込むことにより、新しい機能の発現が期待される。そこで、このようなσ-π共役型ポリマーの特長をいかして、高効率の蛍光発光材料、キャリア輸送材料などとして利用できる新しいタイプの材料開発を行うことを目的として検討を行い、以下に示す成果を得た。 1)オリゴチエニレンなどのπ共役系とケイ素基との交互ポリマーを合成し、それらが、含まれるπ電子系の種類に応じて色素増感太陽電池の増感色素、多層型EL素子のホール輸送層、りん光EL素子のホスト材料としての利用可能なことを見出した。 2)π共役ポリマーにσ-π共役ユニットを補助的に埋め込むという分子設計に従って、有効なπ共役ポリマーとして知られているポリチオフェン鎖に分子内ケイ素架橋を導入した。得られたポリマーでは共役長がかなり拡張されており、通常のポリチオフェンに比べて100nm近く赤色シフトしたUV吸収を示した。また、このポリマーが単層のEL素子発光材料としての利用できることを見出した。 3)EL素子のホール輸送剤として利用されるポリチオフェンの熱処理によって、EL特性が向上することを見出した。 4)ケイ素をコアにして、複数のオリゴチオフェンを導入したσ-π共役型のオリゴマーの合成を行い、それらがp-型の有機TFT材料として機能することを明らかにした。 5)上記の4で合成したオリゴマーに光反応性があり、微細加工が可能なトランジスタ材料などとしての利用が可能であることを示した。
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