研究課題
有機分子を用いたエネルギー変換システムに関する研究は、基礎科学的観点からも実用デバイス構築の観点からも興味を集めている。本研究では、光励起色素-導電性高分子-電子受容体階層構造複合膜の構造と光電変換特性との相関を明らかにすることを目的として、実験を進め、平成18年度に以下の成果を得た。導電性高分子としてポリチオフェン、光励起色素としてチオフェン部位を備えたポルフィリン誘導体、そして電子受容体部位としてチオフェン部位を備えたフラーレン誘導体を用いて、逐次電解重合法によって一連の構造を持つ複合膜を得た。これらの構造を各種分光測定・電子顕微鏡観察等で確認した。特に、X線光電子スペクトル分析による膜組成の深さ方向分析によって、特にポルフィリン部位の分布が深さ方向に傾斜していることが明らかとなり、逐次電解重合法によって、階層構造を簡便に形成することが可能であることを実験的に示すことに成功した。また、吸収スペクトル・蛍光スペクトルによって、ポルフィリン導入量が電解重合条件によって制御可能であることが明らかとなった。これらの複合膜の光電変換特性を評価したところ、複合膜の階層構造・分光特性・光電変換特性には明確な相関が見られ、光誘起電子移動の多段階化によって光電変換特性が高効率化されたことが強く示唆された。また、ポルフィリン導入量等によっても光電変換特性は顕著に影響されることを実験的に見いだし、複合膜構造の設計によって光電変換特性を制御できることを示すことができた。
すべて 2007
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Japanese Journal of Applied Physics 46・4B(印刷中)