π電子共役系を分子中心に有するディスコチック液晶は高速の電荷移動度を示しうる液晶性半導体として近年の有機エレクトロニクス研究の一つの興味深いカテゴリーとして活発に研究されている。このディスコチック液晶性半導体について(1)自発的配向特性の制御に係る研究として数種のペルフルオロアルキル置換トリフェニレン液晶の自発的配向特性を表面エネルギーの観点から定量的に解釈すること及び(2)電荷移動の高速化に向けてディスコチック液晶のカラム構造の制御をフタロシアニンmオキソポリマー液晶に対して分子間の特異的相互作用を導入することにより実現することについて研究を行った。その結果、自発的配向特性の解明では、プレーナー配向した薄膜の表面エネルギーを液適法による接触角測定から評価することに成功した。これにより、各種基板上での強い自発的ホメオトロピック配向性は、プレーナー配向により界面エネルギーが上昇することに起因するという示唆が得られ、一連の配向挙動の実験結果を支持する。一方、電荷移動の高速化では8本鎖フタロシアニンシリコン錯体(長鎖はSC18H37及びOC18H37)をモノマー、ダイマー、オリゴマーとして合成、軸配位子に依存した液晶相の熱安定性やダイマーが過熱時に重合が優先しない熱的に安定なカラムナー液晶相を示すことが判った(アルコキシ長鎖誘導体の場合は180℃以上で重合することが知られている)。電荷移動度(TOF法)はホールについて10-3-10-4cm2V-1s-1オーダであるが軸配位子の違いにより変化することからカラム形成時の積層状態についてホッピング電荷移動の観点から軸配位子の立体的効果と相互作用に関する考察を行った。
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