フラーレン部分構造分子でもあるバッキーボウルのうち、一部の誘導体において結晶状態で同一方向に垂直にカラム状積層体を形成することが見出されている。この積層体は固体状態において大きな双極子モーメントを有し導電性を示すなど、バッキーボウル独自の新たなπ電子系分子集合体である。ドット状にバッキーボウルを吸着し、さらにその垂直方向へ積層できれば、元来有機化合物の得意とする2次元平面上でのナノメートルスケールエンジニアリングに加え、垂直(3次元方向)への定量的なシグナル導出が可能となるため、理想的なナノドット候補化合物となる。本研究では、まず第1目標として、バッキーボウルの一般的合成法の確立を目指した。19年度の研究においてはC_<3v>対称のスマネン誘導体のキラルな共通中間体の大量合成法の確立を行った。その結果、総行程を約半分に、また総収率を20%向上することに成功した。また合成品の光学純度はほぼ100%であった。合成中間体を数十グラムスケールで合成することが可能となったことから、今後、実際のナノリンク分子としての実験・測定が容易になることが期待される。
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