本研究では、サブ100ピコ秒の時間分解能の、MOS集積回路を利用した高周波電子輸送特性測定回路を新ツールとして開発し、ナノリンク分子の高周波電子輸送特性、光応答を実測を目指している。ナノリンク分子の電子輸送計測では、STMを用いる手法と、リソグラフィーによる微細加工で作成された固定電極を用いる手法の、両方からアプローチすることができるが、何れも静的な電気伝導度を計測対象にしているものが多い。最終目標に、有機デバイスの要素科学として展開する研究までを掲げているが、デバイス研究で最も重要な高周波特性が抜けている。動的な電気輸送特性は多体問題であり、理論的には扱いにくいが、実験的には先行して、着手すべき研究である。本研究では、サブ100ピコ秒の時間分解能でナノリンク分子の高周波電子輸送特性を計測する新ツール"集積回路を利用した高周波電子輸送特性測定回路"を開発し、有機分子の高周波特性、光応答等を実測する。 本年度は専用回路を完動させることを目的とした。高周波輸送特性測定回路には、2端子の金属電極が、100nmの間隔で隣接している。0.2μm角の部分だけ、回路の保護膜であるシリコン酸化膜を除去している。この部分に、分子を含む溶媒等をたらして、電極に分子を固定して、妥当な静的電気伝導度であることを確かめた。独立に、MOSを用いた専用回路にパルスを入力して、高周波輸送特性の測定が可能であることを確かめた。
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