研究概要 |
最近深く束縛されたK中間子原子核の存在について理論・実験的に非常に興味が持たれている。FINUDAグループは原子核とK中間子の反応からKppの束縛状態が観測されたと解釈できる実験データを発表した。これまでこれらのK中間子原子核状態の理論的研究は、K-原子核の光学ポテンシャルを用いて行われてきた。しかしながらS波のKN相互作用においてはΛ(1405)の共鳴が大きな役割を果たすことが知られている。このために、小数ハドロン系であるKppの共鳴状態の理論的解析では、KNNの自由度をダイナミカルに取り入れた研究が重要となると考えられる。 本研究では、KNN-πNΣのチャンネル結合Faddeev方程式を用いた3粒子共鳴状態の研究を行った。この系で最も重要なS波の中間子-バリオン相互作用は、カイラルラグランジアンを元に構築した。この相互作用はKN-πΣチャンネルにΛ(1405)共鳴を生成する。また3粒子共鳴状態を解析するために、複素エネルギー面にFaddeev振幅を解析接続する方法を開発し、非物理Riemann面における極を数値的に求め3粒子共鳴状態を探索した。その結果、KNNのしきいエネルギーから、約80MeV束縛し、幅約60MeVの共鳴状態が存在することを見出した。この研究成果については日本物絵理学会および国際会議IX international conference on hypernuclear and strange particle physics(Mainz, 2006年10月)において口頭発表を行った。また論文を学会誌に投稿中である。
|