研究概要 |
研究課題に対して、以下の成果をえた。 (A):AN→NN弱崩壊において、新たに擬ベクトルa_1中間子交換(ρπ/a_1及びσπ/a_1)相互作用ポテンシャルを導入した。ρπ/a_1交換は中心力で2π/σ交換のものと反対符号で、またテンソル力では2π/ρ交換のものと反対符号となる特徴を持ち、一方、パリティ非保存力では2π/ρ交換等と同符号で働く。σπ/a_1交換の寄与は限定的である。この結果全体のポテンシャルは1fm以下の短距離領域で大きく変更をうけることとなった。 (B):新しい相互作用ポテンシャルを用いて、^5_ΛHe,^<12>_ΛCに加えて^<11>_ΛBからの崩壊陽子非対称度パラメータ及び崩壊幅を精確な表式により計算した。非対称度パラメータは、共に正で非常に小さい値をえた。これは実験値を測定誤差内で良く説明し、これまでパズルとされていた問題に一つの解決を与えた。崩壊幅及びn/p比も良く説明できる。これより、新モデルは崩壊観測量について統一的理解を与え、カイラル対称性(ρとa_1,及びπとσ)を考慮した対中間子交換相互作用の重要性を示している。 (C):新しいバリオン間相互作用ESC(Extended-soft-core)モデルは、NN散乱位相差データを精度よく再現し、Λハイパー核のデータと良い整合性を示す。S=-2においてはΛΛ-ΞN-ΣΣの強い結合を示すと共に、ΞNチャンネルにおけるスピン・アイソスピン依存性により特徴的なΞハイパー核状態が作られる。本研究ではダブルΛハイパー核およびΞハイパー核にESCモデルを適用し構造計算を系統的に行って今後の実験における検証可能性を検討した。ストレンジネスを含む三体力の役割についても調べた。
|