この研究の目的は、軌道部分が励起したストレンジネスを含むクォーク系に、クォーク反クォーク対が1対付け加わった状態が混合する可能性とその影響を調べることにより、ストレンジネスを含む励起したハドロンの構造とそれを引き起こすダイナミクスに対する知見を得ることである。 今年度は、Λ(1405)、および、D_<sJ>^±、X(3872)について研究を進めた。 Λ(1405)については、3クォーク系とクォーク反クォーク系の散乱を考え、そこに3クォーク状態を混合させると、ピークの位置と幅の実験値を再現する事が出来、さらに散乱長についても、計算値が実験値と定性的に合致することを示した。また、クォーク模型と、バリオンを基礎粒子とした理論とを、ピークが出るメカニズムについて比較し、後者では強い核子-K中間子間の引力の為にピークが現れるのに対し、クォーク模型では、その引力が弱いために3クォーク状態がA(1405)を作る重要な要素になることを示した。 X(3872)とD_<sJ>^±については、2クォーク2反クォーク系とクォーク反クォーク系の混合を考慮して状態を解いた。その結果、X(3872)では、クォーク反クォーク系の混合により、実験結果が示唆するように、アイソスピンが0の系が1の系よりも軽くなる可能性があることがわかった。また、D_<sJ>^±については、単純な2クォーク2反クォーク系およびクォーク反クォーク系の混合状態で、クォーク間に1グルーオン交換力等が作用しているという模型では、系に引力が足りず、実験で見られる軽い状態を構成するには、別のメカズムが必要であることを示唆することが出来た。
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