本研究計画は、ドイツ重イオン研究所(GSI)の加速器を使い、高エネルギー重イオンビームを発生させ、これを標的に照射して生成されるハイパー核を測定することを目的としている。この実験では、ハイパー核固有の崩壊様式を、崩壊によって発生する粒子の飛跡を追うことで検出し、ハイパー核の生成を同定する計画である。よって、反応で生成された粒子の飛跡を精度よく測定することのできる検出器の開発が、実験成功の鍵を握っている。 19年度は、実験に必要な位置検出器(ファイバーシンチレーター)を日本で製作し、検査を行った後、GSIに送って、読み出し回路などとの組み合わせ総合試験を行った。GSIでは、核子あたり1.9GeVの運動エネルギーに加速された^<58>Niの重イオンビームを^<12>Cターゲットに照射し、核反応によって生成されたp、α、πといった粒子を選び出して、検出器に照射して、検出器の応答や読み出し回路の動作を調べた。これらの粒子は、ハイパー核が崩壊して発生する粒子と同じ種類の粒子であるが、このテスト実験により、それぞれの粒子に対する位置分解能とエネルギー分解能を測定した。その結果、これらの粒子を識別しながら、十分な検出能力をもって測定できることが確認できた。 GSIでは、本番の実験が、21年初頭にスケジュールされている。本研究の所定の成果が挙げられるように、20年度には、さらに他の検出器や電磁石も組み合わせて試験を行い、検出器と回路系、データ収集系の完成度を高めていく。
|