研究概要 |
Sr_2RuO_4はNMRおよびμSR測定からスピン三重項超伝導体であることが明らかとなっている.これまで我々はSr_2RuO_4単結晶の極低温静磁化測定を行い,[100]方向に磁場を印加した場合,0.8K以下の温度領域において上部臨界磁場B_<c2>(T)直下で磁化が増大し,新たな超伝導相が出現すること,また,この磁化の異常が現れる磁場が比熱や熱伝導率に異常が現れる磁場と一致すること,さらに,0.9T近傍で2次相転移的な磁化の異常が存在することを報告してきた.今回我々は,磁場をRuO_2面にほぼ平行に磁場を印加して磁化および磁気トルク測定を行い,Sr_2RuO_4の超伝導特性,特に上部臨界磁場B_<c2>(T)の低温における振る舞いを調べた.また,磁場を[100]方向方向に印加したときに,異常なピニング現象が起こることを発見した. 磁場をRuO_2面にほぼ平行に磁場を印加した場合,磁場とRuO_2面のなす角度が5°以上の場合,低温におけるB_<c2>(T)の抑制は見られなかったが,磁場がほぼRuO_2面と平行になると,新たな超伝導相が出現しなくてもB_<c2>(T)が低温で抑えられていることが分かった.ここで,磁場とRuO_2面のなす角度は,最低温における上部臨界磁場の値を過去の文献値と比較して求めた. 一方,[001]方向に磁場を印加した場合,ゼロ磁場近傍で多段の小さなフラックスジャンプが起こることを観測した.また,上部臨界磁場B_<c2>(T)直下において,いわゆるピーク効果(PE)も観測した.さらにゼロ磁場近傍においてヒステリシス磁化が緩やかなピークをとる現象(Second Magnetization Peak(SMP)効果)が0.8K以上の温度で現れることがわかった.このSMPは磁場勾配の大きさによって振る舞いが異なる.フラックスジャンプやSMPが起こる起源として,渦糸格子のトポロジー変化によるブラッググラスから渦糸グラスへの相転移や超伝導内部自由度の影響などが可能性として考えられる.
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