研究課題/領域番号 |
18043003
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
引原 俊哉 北海道大学, 大学院理学研究院, 助教授 (00373358)
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研究分担者 |
山本 昌司 北海道大学, 大学院理学研究院, 教授 (90252551)
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キーワード | 物性理論 / 磁性 / 量子スピン系 / フラストレーション / リング交換相互作用 / カイラリティ秩序 / 新奇量子相 |
研究概要 |
リング交換・フラストレーションをもつ磁場中量子スピン系における、新奇量子相の探求を行った。まず、リング交換を含んだ磁場中二本鎖梯子ハイゼンベルグ量子スピン系に対する考察を行い、この系において、これまでに知られていたスピン=カイラリティ相対変換に加えて、もう一つの新しい厳密な双対変換が成り立つことを発見した。これら2つの双対変換により、この系のパラメータ空間の双対構造が明らかになり、相転移線の位置など、系の相図が満たすべき様々な性質を厳密に導出することが可能になった。さらに、厳密対角化法及び密度行列繰り込み群法を用いた数値計算を行い、この系においては、リング交換相互作用と磁場の相乗効果により、ベクトルカイラリティが支配的な朝永・ラッティンジャー流体や、two-magnon bound pairの安定化など、新奇な量子状態・現象が実現されることを示した。これらの結果は、リング交換相互作用がもたらす物理に関する新たな知見を与えるものとして、意義のある結果である。 また、リング交換を含んだジグザグ梯子ハイゼンベルグ量子スピン系についての研究も行った。この系は、He3固体で実現される三角格子リング交換模型の一次元版としてだけでなく、低電子密度量子細線中で実現される電子状態のスピン自由度を記述するものとして注目されている模型である。我々は、厳密対角化法を用いた数値解析により、この系の基底状態相図を作成し、リング交換相互作用が大きいパラメータ領域で、部分強磁性相や新奇非磁性相など、通常のジグザグスピン鎖では実現されない新しい量子相が出現することを示した。今回得られた基底状態相図は、この系の今後の研究の出発点となるものとして、大きな意義のある結果であると言える。
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