研究概要 |
超流動ヘリウム3-A相のMermin-Hoテクスチャーに対して回転を与え,そのNMRのスピン波モードを調べ,秩序変数がどのような応答を示すかを考察した.これにより,ヘリウム3の発見以来懸案であった「intrinsicなクーパー対の軌道角運動量が観測出来るかどうか」を実験から決定することが可能になった.この結果は,比叡山セミナーハウスで開かれたシンポジウムで発表し,論文作成中である。 東京大学理学部福山研究室で行われている,グラファイト基板上に吸着されたヘリウム粒子の構造を調べた.吸着一層目にヘリウム4,二層目にヘリウム3を置いて,二層目の4/7層の性質の知見を得ようというものである.まず,一層目と二層目のヘリウム3,4吸着構造を逆にしたものを用意し,経路積分モンテカルロを行ったところ吸着層の構造は逆転し,正規の構造が実現した.これにより実験的に計画されている構造は,安定であることが示された.さらに正規の構造における二層目の4/7構造の融点を経路積分モンテカルロ法を利用し,Binderパラメターのサイズ効果を調べることで決定した。この結果,実験で観測された融点と思われる比熱の変化の温度を定量的に再現することができた.この結果は,那須高原及び淡路島で行われたシンポジウムで発表し,論文作成中である. ナノスケールの半径を持つ円筒型細管中に,ヘリウム4粒子を閉じ込めた系での超流動の発現を名古屋大学理学部和田研究室が研究している.この系でのボーズ凝縮および超流動をボーズ緯計性を採り入れた経路積分モンテカルロ法で調べた.その結果,ボーズ凝縮の発現温度は系の半径が小さくなること,および粒子密度の減少に伴い,著しく低下することが示された。この結果は千葉で行われた物理学会の招待講演で発表し,論文作成中である.
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