奇パリティー超伝導を示すと考えられている2つのウラン系磁性超伝導体(超伝導を示す磁性体)に対し、以下のような研究成果を上げた。 (1)UGe_2 UGe_2は常圧でキュリー温度52Kをもつ強磁性体(磁石)である。圧力を印加することによりキュリー温度は減少し、約15kbarの高圧でゼロとなる。この臨界圧力以下の狭い圧力範囲(10-15kbar)で超伝導が観測され(超伝導転移温度はもう1つの臨界圧力で最大となり、その大きさは約0.7K)、多くの研究者の興味を集めている。強磁性と超伝導の相関は物性物理学の重要な研究課題の1つであるが、格好の研究対象であるUGe_2の研究には高圧・極低温という厳しい実験条件が求められるため、上記課題は未解明のままである。 本研究では、圧力下ac磁化率の測定を行い、超伝導転移温度および測定最低温度(約60mK)における超伝導反磁性磁化率(超伝導ボリューム・フラクションに相当)の圧力依存を求めた。その結果、従来とは質的に異なる超伝導転移温度の圧力依存を見出した。すなわち、超伝導ボリューム・フラクションは2つの臨界圧力近傍においてピークを形成する。このツインピーク構造の物理的意味、例えば、2つの異なる超伝導領域が存在する可能性については、今後の研究課題として残されている。 また、高圧下熱膨張測定を行い、下部臨界圧力近傍での熱力学的性質(臨界指数など)を解明しつつある。これと上記ac磁化率の測定結果とを結びつけることにより、超伝導発現機構に対するモデルを提唱できるであろう。これは次年度の研究課題である。 (2)URhGe 常圧下で強磁性と超伝導の共存・競合を示すとされているURhGeの多結晶および単結晶試料を育成した。これらの試料の物性を測定したところ、いずれのas-grown試料も強磁性転移を示すが、超伝導は示さなかった。さらに、種々の条件下でアニール効果を調べた結果、ある条件下でアニールした多結晶試料は超伝導を示したものの、強磁性は消失してしまった。今後、さらに、強磁性と超伝導の共存条件を探る予定である。
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