研究概要 |
本研究の目的は,スーパークリーンな系のひとつRu214酸化物において,磁場・圧力で誘起される様々な新奇量子凝縮相や現象を探索する.そして,その状態の特異性を明らかにし,それらの発現機構の理解を進めることにある.今年度得られた具体的成果を以下に示す. (1)モット絶縁体Ca_2RuO_4の圧力による金属化と金属相での基底状態の探索 (a)微小磁化測定用小型ピストンシリンダー圧力セルを開発し,10^<-3>emuの磁化測定を2GPaまで可能にした.その結果,圧力下Ca_2RuO_4で見られる強磁性の遍歴パラメータを決定した.また,この系の強磁性は10倍程度の異方性を持つ.この系は,2次元電子系で強磁性を示す初めて例であろう. (b)多重極端条件下(圧力4GPa,磁場14T,温度50mK)で使用可能な小型ピストンシリンダー型圧力装置を開発,交流磁化率,電気抵抗の測定を可能にした.その結果,加圧され金属と非金属の中間状態にあるCa_2RuO_4は,金属-絶縁体転移が磁場で誘起され,低温で150%の正の磁気抵抗を示すことがわかった. (2)超音波を用いたSr_2RuO_4のスピントリプレット超伝導状態の研究 Sr_2RuO_4の超伝導はトリプレット状態にあると考えられているが,これを決定づける実験として,超音波による弾性定数の温度・磁場変化を測定した.その結果,磁化の温度・磁場相図に現れる磁場誘起超伝導相は確認できなかった.一方,臨界点付近で弾性定数の温度・磁場依存性を詳しく調べ,M.Sigristの理論と比較した.その結果,トリプレット超伝導特有の現象である横波弾性率(C_<11>-C_<12>)/2とC_<33>の飛びを観測し,Sr_2RuO_4の超伝導がトリプレット状態にあることを確認した.
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