研究概要 |
超強磁場下における強相関電子系の新しい量子状態やそれに伴う新機能探索はチャレンジングな緊急課題である。本研究では、高エネルギーX線分光を用いたミクロな電子状態の理論的研究から強相関電子系の強磁場下における新しい量子状態の評価・探索を目的とし研究を行っている。 平成18年度に実施した研究の成果は以下のとおりである: 1.以前より行ってきた、遷移金属・希土類化合物中の希土類元素のL吸収端XMCDの機構を更に確固たるものにするため、遷移金属・希土類化合物に対応する電子モデルを構築し、その理論から得られる興味ある結果を検証した。計算では、伝導電子系はtight-binding近似を用い、局在電子系は原子モデルで取り扱い、出来得る限り実験結果との定量的比較に耐えうる計算を行った。特にErFe_2で観測されているMCDスペクトルの異常存温度変化が、私たちの理論で自然に説明されることを確認し、私たちのL吸収端XMCDの理論の正当性を示した。 2.EuNi_2(Si_<1-x>Ge_x)で実現される磁場誘起価数転移が,高エネルギーX線分光ではどの様に観測されるかを上記1.におけるモデルを拡張し、理論的に予測した。その結果を松田(東北大)たちの最近の実験結果と比較することにより、そこから得られる情報の詳細を明らかにするとともに、現在それらの磁気円2色性(XMCD)スペクトルが、価数転移研究においていかに有用かを明らかにしつつある。 3.擬1次元S=1磁性体、いわゆるハルデーン系での磁場誘起相転移を場の理論と数値計算により研究し、基底状態相図を完成するとともに秩序相間の新しい相転移を発見した。
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