研究概要 |
超強磁場を用いた新しい量子相制御を目指して、本年度は以下の物質群を中心に実験を進めた。 その内容を物質群毎に要約する。 (1)Nd_<1-x>Sr_xMnO_3酸化物 本系では高ドーブ域におけるA型反強磁性x^2-y^2型、c型反強磁性3z^2-r^2型軌道秩序相が競合する相境界に着目し、その臨界挙動に関する研究を行い、磁場による軌道秩序相制御を試みた。磁化、抵抗測定の結果、相境界(x=0.625)において最も強磁性的相関が発達し、巨大磁気抵抗が観測された。比熱、交流磁化測定から、この強磁性相は長距離秩序相ではなく、動的に揺らいでいることを示唆する結果が得られた。この特異な(弱)強磁性相関は、軌道秩序の揺らぎに由来していると考えられる。 (2)Aサイト秩序型および無秩序型酸化物 Aサイト秩序型Y_<1-x>Sr_xCoO_<3-δ>においては酸素欠損量δの変化に対して反強磁性絶縁体相と強磁性金属相が多重臨界点を形成しており、相境界近傍で磁場を印加することによる室温相制御が期待される。本系ではこの点に着目し、さまざまなxやδを持つ試料を作製し、その電子物性の測定を行った。その結果、反強磁性絶縁体相(x=3/4,δ=0.48)において320Kの高温で10%程度の磁気抵抗効果が観測された。 また、三浦登先生との共同研究でAサイト無秩序型マンガン酸化物R_<1-x>AE_xMnO_3(R=Sm, Gd, Eu, AE=Ba, Sr, x=0.5,0.45)試料の電荷・軌道整列反強磁性相の強磁場磁化過程測定を行った。その結果、Aサイトの平均イオン半径およびAサイトのランダムネス(分散値)に依って、メタ磁性転移を起こすものとそうでないグループに分かれることが明らかとなった。 (3)磁性強誘電酸化物 本系では、強磁場下での新しい誘電性制御を目指し、新規磁性強誘電遷移金属酸化物の開拓を目標に、コバルトを含む新しい一連の酸化物結晶の磁場下での誘電特性測定を行った。強誘電相は見いだせなかったが、低温で大きなmagnetocapacitanceを観測した。また磁場の印加により焦電性を示すことも見出した。
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