本研究の目的は、フッ素系分子集合体と種々のイオン液体との相互作用について詳細に検討を行うことにより、イオン液体のナノレベルでの構造制御およびイオン液体へのフッ素の優れた機能が融合したフッ素系イオン液体ナノコンポジットを開発させるとともに、そのユニークな機能を明確にさせることにある。そこで本年度の研究においては、フルオロアルキル基が末端のみに導入された高分子化合物のイオン液体中において構築される分子集合体の構造を詳細に検討するとともに、これら分子集合体とフラーレンを始め種々のゲスト分子とのホスト-ゲスト相互作用に及ぼすイオン液体の機能を明確なものとさせた。さらに本研究では、種々のイオン液体存在下におけるフルオロアルキル基含有オリゴマー類とテトラエトキシシランおよびシリカナノ粒子との反応により、ナノレベルで粒子サイズの揃った、さらには種々の溶媒への分散安定性の高いフッ素系高分子集合体/イオン液体/シリカゲルナノコンポジットの合成に成功した。これらナノコンポジット類を汎用の有機高分子材料への表面改質剤へ展開させることに成功し、改質された表面においてはフッ素に起因した高い防汚性を発現させることができた。特に興味深いことに、本研究によりはじめて開発されたこれらフッ素系高分子/イオン液体/シリカゲルナノコンポジットは800℃に焼成させても重量減少をまったく示さないという極めて興味深い知見が得られ、この点について今後詳細に検討を行って行く予定である。
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