研究概要 |
ポリフルオロカルボン酸Na塩(R_fCO_2Na)を支持塩とするR_fCO_HのKolbe電解によるヒドロフルオロエーテル(HFE)類の合成における,溶媒の影響(副反応の介在(アセタールの生成,水素引き抜き反応,炭酸ナトリウムの析出)や生成物の精製の煩雑さ)の解決方法として本研究で採用した『ポリフルオロカルボン酸トリブチルアンモニウムのイミダゾリウム系イオン液体中でのKolbe電解』が高効率で進行し,二電子酸化を抑制できることを確認できた。この系では,対カチオンとしてアルカリ金属イオンを用いていないため,発生するCO_2が炭酸塩として系内に残留せず,電極への固体付着による電流効率の低下が起こらなかったが,電解終点に近づくに従って副生アミンすなわちトリブチルアミンやイミダゾール由来のタール状副生成物の生成が認められた。 また,一般の4級化イオン液体(N-H結合を持たない)を溶媒に用いずに,N-H結合を持つイオン液体であるアンモニウム=ポリフルオロアルカノアート(R_fCO_2^-・R_3N-H^+)を支持塩として無溶媒Kolbe電解を検討した。電解の進行に合わせて基質カルボン酸(R_fCO_2H)を導入し,R_fCO_2^-・R_3N-H^+/R_fCO_H=1/10(mol/mol)を維持しながら電解を行ったところ,生成物R_f-R_fは基質-支持塩液相の下相として分離し,セル底部から連続的に引き抜くことができた。また,得られた生成物R_f-R_fは,後処理等を行わなくても95%以上の純度であった。常にフリーのポリフルオロカルボン酸が存在するように導入条件を設定すれば,系が電解反応終点状態にならないため,アミン由来の副反応が抑制できた。また,水およびイオン液体(DEME BF_4など)を溶媒とする同系の電解では,水系でポリフルオロアルカノアートのKolbe生成物をもっとも高効率で得ることができた。
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