研究概要 |
本研究では、イオン液体を用いる触媒の新しい固定化法の開発を目的とした。 1)均一系有機金属触媒のイオン液体溶液を無定形無機固体の細孔内に取り込ませ固定化した触媒SILC(Supported Ionic Liquid Catalyst)の開発を行い、触媒効率の向上とリサイクル性の発現を検討した。この方法は、非水溶性、非脂溶性、不揮発性というイオン液体の特性を触媒のバインダーとして利用するものであり、他の溶剤、例えばエチレングリコール、フルオラス溶媒、あるいは水などに比べると、汎用性が非常に高い。固体担体細孔内への含浸法による固定化に対し、不安定な有機金属触媒にも対応出来るため、よりソフトな固定化法である。また、固定化法は容易かつ低コストである。さらに溶液反応でこれまで蓄積されてきた触媒反応に関する知見をそのまま利用出来るのも利点である。Pd-SILCを用いるMizoroki-Heck反応では水溶媒中で配位子を用いる事無くTON 200,000、Suzuki-Miyaura反応では水-エタノール溶媒中室温にて配位子を用いる事無くTON 2,000,000の高い効率を達成した。またいずれにおいてもPd-SILCは6回のリサイクル使用が可能であった。 2)イオン液体部を介して無定形シリカゲルとLewis酸あるいはBronsted酸を共有結合により結びつけた新しい有機分子固体触媒ILIS(Ionic Liquid Immobilized on Silica)を開発した。この固体酸触媒はインドールのアルデヒドヘの1,2+付加反応によるビスインドリルメタン合成に用いられた。触媒は様々な基質に対応し高収率で生成物を与え、また簡単な濾過のみで6回リサイクル使用するす事が出来た。 3)イオン液体を有機分子触媒であるアミノ酸の液相担体として用い、天然有機化合物の重要出発原料である光学活性Wieland-Miescherケトン合成に成功した。アミノ酸およびイオン液体はそのまま5回リサイクル使用できた。
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