まず既存のイオン液体を用いた多孔性ガラス複合体での導電特性と起電特性を見た。この場合、[bmim]NTf_23mlにHNTf_2を3mmol(843mg)溶かし、これを多孔質グラスフィルターにしみこませて電解質とした。これにAgペーストを電極として塗布し、室温、50℃、100℃で電気伝導率(周波数範囲5Hz~5MHz)を、Ar+3%H_2/Airでの水素電池起電力を測定した。 電気伝導率測定結果からは、電解質は室温で560Ωの抵抗値(導電率では5x10^<-4>Scm^<-1>)であり、ガラス基材を含むにも拘わらず比較的高い値を示すことが分かった。この導電率は100℃では10^<-3>Scm^<-1>まで上昇した。しかしながら、このものを使った水素電池では、水素濃淡に対応した電位応答レスポンスはえられたものの、その電圧は理論値通りではなく、且つ時間的に安定なものではなかった。議論の結果、この原因としては、まず水素の活量が絶対的に小さいことが考えられた。 電池発電する場合に用いるべき電解質に、酸化物イオン(O^<2->)伝導体もある。そこでこれがイオン液体で実現できるかどうかを検討した。まず比較的活性なLi_2OやNa_2Oを[bmim]NTf_2など典型的なイオン液体に溶解させ、酸化物イオンが可動とならないかを検討した。しかしこの場合、上記の塩でさえ容易に溶かしうるイオン液体は得られなかった。そこで次に、酸化物イオンを含みうる新しいイオン液体の合成に取りかかった。この場合結果的には液体とはならずゲル状物質が得られた。上の式で、+になっているN同士が近すぎるため、イオン液体が生成しにくいのではないかと考え、Nの間の炭素数を一つ増やしてみる試みを行って、何らかの形で酸化物イオンは入っていると思われる結果を得ている。 更に酸化物イオンと共存しうるカチオンを安定化に存在させるために、カチオン骨格にケイ素を導入する試みを行った。その結果、かなり粘性は高いが液体状のものが得られた。NMRからは目的物のピークが見られるので、目的物が出来ていると考えられる。まだ原料が残っている状態のため、今後は精製等を考えていかなければならないが、少なくともSiをアニオンに持つ新しい化合物を合成できたと考えている。
|