研究概要 |
本年度は,酵素をポリエチレングリコール(PEG)で化学修飾することにより、イオン液体に均一に可溶化し飛躍的に酵素活性が向上することを明らかにした。イオン液体は不揮発性であるため溶媒の損失がなく、酵素にとって不可欠な溶媒和された環境を半永久的に維持することができる。さらに、イオン液体は疎水性と高極性を同時に示すという特異的溶媒物性のため、環境ホルモンのような疎水性の高い化合物からペプチド・多糖といった高極性の生理活性物質まで溶解しうるため、幅広い化合物をターゲットとすることができる。 本年度の大きな成果として,イオン液体中での酵素活性を分光学的手法を用いて迅速かつ簡便に解析する手法の開発を行うことができた。具体的には,エタノール等のアルコール類を求核剤とすることで酵素反応により発色団の遊離が確認された。また、その反応速度は酵素濃度に依存し、発色反応が酵素の触媒作用によるものであることを示した。また、スブチリシンとα-キモトリプシンという2種類のプロテアーゼとそれぞれの酵素に対する基質を用いて反応を行ったところ、各酵素に対する基質を用いた時のみ発色反応が見られ、イオン液体中においても酵素の厳密な基質特異性が維持されていることが示された。本手法は、イオン液体に基質と酵素を加えるだけでリアルタイムに酵素活性を評価できる極めて迅速・簡便な分析系である。そのため反応条件を種々変化させて酵素活性を調査する速度論解析において非常に有効であり、イオン液体中における酵素反応の動力学パラメータを簡便に算出することが可能となった。
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