研究課題
X線反射率測定(XR)は、X線を試料に対してすれすれに入射させ、全反射角度近傍での反射率を観測することにより、表面深さ方向の密度分布を得ようというものである。最近発展してきた様々な表面構造研究の手法と比較すると、その多くが表面1層のみの分子配向等を見るのに対し、表面に「埋もれた」構造まで見ることができるという利点がある。Solutskinらはこの手法を用いたところ、BMIM BF_4とPF_6は表面で液体金属のように層状の構造をとらないが、表面の密度がバルクに比べて18%も大きいということを見出した。彼らは2つの構造を提案しているが、そのどちらが正しいかを明らかにするには表面回折測定(GIXD)を行って、水平面内の構造を明らかにする必要があると言っている。表面回折測定とは、XR法と同様にX線を試料に対してすれすれに入射させることで、試料へのX線侵入深さを10mm程度に抑え、そこからの回折X線を測定する手法である。反射率が(入射角=反射角)の配置で測定する方法であるのに対して、(入射角≠回折角)であるため表面内の構造情報も得ることができる。今年度私は両方の手法を併用して、共通試料として購入したBMIM TFSIの表面構造研究を試みた。X線反射率測定の結果厚さ70Åでパルクの密度の80%の希薄な層の存在を示唆する結果が得られた。これはBMIM BF_4とPF_6についての結果と異なることから、現在、空気中での測定における不純物混入等の可能性を検討中である。表面回折測定の結果分子配列が等方的であることを示すリング状の回折パターンが観測された。第一回折リングは散乱ベクトルq=4πsinθ/λに換算すると0.9Å^<-1>に相当し、片柳らによって報告されているBMIM IのバルクのX線回折ピーク1.5Å^<-1>よりもだいぶ小さい。このことはBMIM Iよりも1.6倍大きな長周期構造を持つことを示している。
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Transactions of the MRS-J (印刷中)
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Adv.X-Ray.Chem.Anal., Japan 38
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