本研究では、100年間の製造年次の異なるレールの材料学的な調査結果と製造装置、製造技術の変遷などについて必要な再調査、整理を行い、それらが系統的に関連しながら人為的、技術的努力により発展し、現在世界をリードできるに至った過程を明らかにするとともに、材料のデータから製造条件を推定する方法論について検討した。さらに、製品の実物展示方法について検討した。 1.技術調査に関して (1)レールの材料学的調査結果と製造条件に関する調査結果を対比して、その関係を時系列的に分析し、製鉄所設立当初は銑鋼一貫製鉄技術及びレール製造技術を導入するにはタイミングに恵まれていたことが分かった。 (2)材料と製造条件との関係を明らかにすることができた。特に、高強度熱処理レールの開発は、100年間の成果が見事に結実した八幡製鉄所の成果として世界に誇れるものである。 2.博物館展示に関して (1)上記の技術調査の検討結果を踏まえ、博物館における材料関係技術の展示方法について検討し、展示用カットレールサンプルを作製した。製造年は1902〜1991年までのサンプルならびに海外で製造された1874〜1902年製のものである。これらを板厚10〜20mmに切断して研磨した試料、そのマクロ組織及びサルファープリントした資料を並列に並べて標本とした。 (2)また、解説用のポスターを13枚作成した。すなわち、鉄道創成期から1929年JES制定までのレール技術の変遷過程、レールの材質から見た八幡製鉄所ベッセマー転炉の盛衰、20世紀に八幡製鉄所で製造されたレールの材質調査結果、国産レールの製造設備及び技術の革新過程、国産レールの高強度化技術の革新過程について、これら5項目に分けて解説した。 なお、これらの成果は「日本の近代製鐵における技術革新の分析に関する研究」として出版した。
|