2年間の調査対象技術として、(1)日本独自の鉱床であった黒鉱(複雑硫化鉱)の処理と、(2)現行の銅製錬の主流である自溶炉を取り上げた。 本調査研究は、対象企業の非鉄製錬5社の学振第69委員会委員OBを主体とする産と学0B13名で構成された協力委員会の協力得て、残すべき対象技術の選定、技術の成立の背景、関連情報の収集と体系的検討、聞き取り調査による知的資源の集積などを行い、現地調査も行った。以下個別に実績を述べる。 (1)既に黒鉱は枯渇したが、その処理技術の開発は国家プロジェクトであった。独自に開発された浮遊選鉱法を中心とする選鉱技術、乾式および湿式処理に関する個別の技術について、最初の産学連携研究といえる委員会報告他、基幹技術である選鉱と製錬の企業研究者による博士論文と、関連技術論文や黒鉱選鉱場の操業データが収集した。ここで蓄積された選鉱技術は、環境ビジネスの大きな柱となっている汚染土壌の洗浄に活かされており、脈脈と伝承されている。DOWAの黒鉱選鉱場の変遷については、独自のSO_2-Lime浮選-温水浮選をベースにした黒鉱選鉱技術確立までの対応技術の系統化資料を作成した。 (2)三菱マテリアル以外の製銅各社とも最初に技術導入(1956)した古河の自溶炉技術を足がかりに大きく発展して、世界に冠たる位置を占めるに至った経緯を製錬所見学と共に調査した。2度の足尾の現地調査では技術導入当時のオートクンプ社のオリジナル図面と国内各社への関連設備図面を発見した。まさに、小山工場という自前のプラント工場を抱えていたことを特徴づける貴重な資料である。これらは、研究用に寄託を受けたが、最近足尾の世界遺産登録が浮上しており、21年4月以降古河リソースメタル(株)足尾事業所で保管される。特に、オートクンプ社の図面は国立科学博物館の技術遺産に登録された。
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