本研究では、新幹線開発の技術史的経緯を検証し、世界に類例を見ない日本独自の高速鉄道がどのような過程を経て誕生したかを新資料に基づいて再評価するとともに、その成功の要因について考察しようとするものである。また、計画の開始からすでに半世紀が過ぎようとしている現在、散逸しつつある新幹線の開発に関わる記録、文書類の所在調査は急務であり、関係者の聞き取り調査を併せて実施し、その保存・活用のための方策を検討する。18年度は資料調査、インタビュー調査を行った。資料調査では、鉄道関係雑誌数誌について、新幹線開発前後の時期における新幹線関連記事のタイトル一覧の作成を行った。また財団法人鉄道総合技術研究所保存の島文庫などの個人資料を電子ファイル化した。インタビュー調査では、当時新幹線の技術開発に携わった田中眞一氏(当時技術研究所勤務、三木忠直氏の下で風洞実験に従事し、新幹線の先頭形状決定に寄与した。その後は新幹線の安全の要である輪軸の疲労強度の研究に従事し、設計手法、検査手法の確立に寄与した。)、渡辺偕年氏(当時国鉄新幹線総局で軌道関係補佐、コンクリート枕木の開発に従事。締結装置、バラスと軌道保守の方法、ロングレールの溶接、分岐器開発に寄与した。)、石澤應彦氏(当時国鉄車両設計事務所主任技師、IS式と呼ばれている台車軸箱支持装置を代表とする車両の開発に寄与した。)の3人の技術者にインタビューを行い、録音テープから電子ファイルを作成した。
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