本研究では、いわば光学製品の基礎ともいうべき双眼鏡について、わが国での国産化の背景や、その後の技術の発展、産業としての変遷を以下の方法によって調査研究し明らかにすることが目的である。文献や(株)ニコンなどの主なメーカーに保管されている設計図、製品のカタログなどの文字資料の調査・収集。また、実際に設計に携わった人たちへの聞き取り調査。企業・コレクターなどにより収集保管されている製品の現物資料についてその構造を実地に調査する。当該領域「日本の技術革新」において、光学産業技術の基礎となる双眼鏡について一つの類型を示す。 平成18年度は文献収集を始めとして実物・文字資料の収集・調査を行った。特に(株)ニコンの協力がえられ、社史室に保管されている双眼鏡実物、カタログ等について調査を行うことができた。また特に、(財)日本双眼鏡開放研究所(昭和33年〜46年)が中小メーカー向けに標準的な双眼鏡仕様として配布した設計図を入手した。これは輸出振興のため配布されたもので、多くのメーカーがこれによる双眼鏡を製作した。 これらの資料収集の過程から、軍用ではあるが旧日本陸軍で初めて国産化した「森式双眼鏡」を入手し、当時の技術的背景を確定し論文として発表した。また、戦前期までの双眼鏡製造技術の伝播の系譜について明らかにした。さらに、戦後から現在までの双眼鏡製造技術の伝播、技術革新と製品、光学産業の発達について考察している。それらのうち特に、ニコン製品の技術発達と製品多様化。また高度な技術であり、日本の民生用双眼鏡の特色ともいえる、超広角実視界双眼鏡などについても、ほぼその概略を知ることができている。
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