研究概要 |
視覚探索課題において,特定の刺激配置を繰り返して用いると,被験者はそれに気付かないにもかかわらず目標刺激の検出が早まることが知られている.本研究では,この効果(文脈手がかり効果)を用いて意識的学習と無意識的学習の処理過程の違いを調べた.その結果,意識的学習条件では、無意識的学習条件に比べて、探索時間の短縮効果が小さいことが示された.この結果は、意識的に視覚刺激の配世を覚えるよりも,繰り返し観察する方が,学習にとって有利であることを示唆する.無意識的学習は複雑な場面を記憶する際に効果的であり,視覚探索のような能動的な視覚処理の効率化に貢献していると考えることができる.この点は、刺激画像の時系列的な変化に対しても、繰り返し観察による文脈手掛り効果が得られることからも確認された。動的に変化する網膜像に対する無意識の学習効果は、日常生活に非常に有効である。一方、意識的な学習条件では、学習に要する時間を長く取ることでその効果が増大するとの結果も得ている。繰り返しによる学習効果は、探索課題をこなすだけであるため時間の制御はできないが、意識学習ではそれが可能である。意識的、無意識的両者の役割の違いの解明につながる知見をえることが2できたといえる。また、探索中の眼球運動の解析から、探索時間の短縮が主に注視回数の減少によるものであり、注視時間の変化は小さい傾向がみられた。このことは、一回の注視において処理できる情報量が変化することを意味する。今後、眼球運動の解析から、意識的学習と無意識的学習の結果の相違を検討する可能性を示すことができたといえる。
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