研究課題
動物がさまざまな状況下で適応的な行動を発現させるためには、運動調節の神経機構に加え、それを支える神経基盤としての意識(覚醒)の維持機構とそれらを円滑に連動させるための自律神経系の調節機構が必要となる。本年度は、以下の3点についての実験を行った。1.運動調節の基礎となる筋トーヌスの調節系に関して、橋、延髄において筋トーヌスの調節に関与するニューロン群についての解析を行った。脳幹には、筋トーヌスを減少させる脚橋被蓋核(PPN)のアセチルコリンニューロンと、それから興奮性入力を受け延髄に投射する、橋吻側橋網様核(NRPo)のグルタミン酸ニューロンがある。本実験では、・覚醒時は、これらがGABAニューロンの抑制を受けることによって、筋トーヌズの減少を防ぎ、筋トーヌスの維持に働く。・筋トーヌスは、レム睡眠時に消失する。レム睡眠時にNRPoのグルタミン酸ニューロンはPPNのアセチルコリンニューロンの興奮を受け、PPNのアセチルコリンニューロンは、(おそらくNRPoの)グルタミン酸ニューロンの興奮を受けることにより、レム睡眠時の特異的活動が維持され、筋緊張の消失が起こる。ことが明らかになった。2.視床下部における覚醒の維持機構に関して、ヒスタミンニューロンやオレキシンニューロンの睡眠・覚醒時の活動を記録した。その結果、・これらのニューロンは、覚醒時に特異的な持続的発火をする。・オレキシンニューロンは、睡眠から覚醒への移行に先行して発火するものが多いが、ヒスタミンニューロンは、全て覚醒が起こった後に発火する。ことが明らかになった。3.視床下部の覚醒ニューロンの存在する部位とその周辺のさまざまな部位の微少電気刺激により、覚醒、歩行運動パターン、血圧、下肢筋の血流に対する影響を調べた。その結果、・視床下部内の異なった部位でこれらの生理的変化が起こる。・血圧、血流の変化は運動に先立って起こり、運動のための準備状態を形成している。ことが示された
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