研究概要 |
人間はきわめて柔軟で器用なマニピュレーション能力を持っており,環境とのインタラクションを伴う物体操作(グラスプレス・マニピュレーション)においても,環境からの反力を巧みに利用して物体を操ることができる.このような人間の能力は移動知の発現と考えることができる.本研究では,人間の行うグラスプレス・マニピュレーション,中でも,転がし操作・ピボット操作に着目し,その技能のモデルを求めることを目的としている. 今年度は,人間の行うグラスプレス・マニピュレーションの計測を行う環境を構築した.データグローブおよび三次元磁気センサによって人間と対象物の運動を計測し,また床面の裏に設置した力センサによって,環境からの反力を計測できるようにしている.そして,構築した計測環境を用いて,人間のピボット操作のデータ収集を行った.10名強の被験者について,それぞれ数十回のピボット操作を行わせた. 得られたデータについて,隠れマルコフモデルを用いてモデル化を行った.隠れマルコフモデルのトポロジーの決定にはMDL基準を利用した.得られた隠れマルコフモデルは被験者のピボット操作の技能を反映しており,それらの間の確率的距離尺度をもとに多次元尺度法を適用することで,それぞれの特徴を明らかにすることができた.この手法を利用すれば,現在開発中のマニピュレーション技能モデルが,実際の人間の技能をどれくらい再現できているかを評価することができると考えられる.この技能モデルについては,動力学シミュレータ内でCPGによって駆動される仮想ハンドとして実装中である.
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