研究概要 |
本年度は,人間機械系,とりわけ人間と自動化機械による協調系の設計の実現に向けた研究を行った.そのために,人間が外界や他者との行為を介した相互作用から他者の行動意図を認識し,他者との協調作業を円滑に行なえるようになる動的過程についての計算論モデルを構築した. まず,人間と機械(自動化)とが行う協調作業を対象とし,人間の操作に対して機械の側がそれに適応的に追従して行動を変容させていくことのできる能力を実現するための学習アルゴリズムを開発した.これは状況弁別強化学習機構(SSRL : Situation Sensitive Reinforcement Learning)と呼ばれる学習機構で,作業場での力学的な状況変化の検知に基づいて,機械が人間操作者の意図の変化を同定し,この同定結果に基づいて,機械自らが適応的に作業の内部目標の切り替えを行い,操作者の意図に適合する操作を生成できるようになるための適応学習アルゴリズムである.本研究では,人間操作者とそれと協働する機械を,各々異なる「エージェント」として見立ててモデル化し,これら異なる役割を有する二体のエージェントの間で,一切の明示的・直接的な伝達やコミュニケーションをとること無しに,一方が自らの観測しうる状態変化だけから間接的に他者の意図変化を読み取ることができ,他者が動的に目標を変化させて行動する際にも,協調タスクを持続的に達成できるようになることを,シミュレーション実験で確認した. つぎに,人間が多モード間遷移を内包した自動化機械の振舞いを理解し習熟していく過程を,人間の社会性能力の一つである他者認識の過程として捉え,これを計算論的モデルにより構成した.本研究では,計算論的神経科学や機械学習の領域で提案されているモジュール型学習機構を拡張したモデルを構築し,多モードを有するACC機能を搭載したドライビングシミュレータを用いた被験者実験とユーザのモード認識についての計算論モデルにより,モード認識過程についての構成論的理解を行った.
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