メカニカルストレスと骨代謝の間には密接な関連があり、これまでに、骨量維持や骨リモデリングにおいてメカニカルストレスが重要な役割を果たすことが報告されている。その作用機構として、まずメカニカルスト1レスが情報として細胞に受容(メカノセンシング)され、細胞内情報伝達(メカノトランスダクション)を介して、応答反応(メカノリスポンス)が引き起こされると考えられる。ストレス応答シグナル伝達路(SAPKシステム)は、MAPKKK、MAPKKおよびMAPK(JNK及びp38)の3種類のプロテインキナーゼによる連続した三段階のリン酸化反応を基本骨格とする伝達路で、様々な環境ストレスやサイトカインによって活性化され、多彩な生物学的事象を誘導することが知られている。我々はメカニカルストレスが骨芽細胞(MC3T3E1)のSAPKシステムに与える影響及びその生物学的意義について、細胞生物学的な解析を行った。 MC3T3E1細胞に様々な強度の伸展刺激を負荷し、SAPKシステムの構成因子であるJNK及びp38のリン酸化(活性化)に与える影響を検討したところ、伸展の刺激の強度(伸展率1-12%)や持続時間(5-120分)によって、異なった活性化パターンを示すことが見出された。伸展率12%の場合、刺激開始後5分でJNKとp38の活性化が観察されるが、JNKの活性化は、刺激に伴う細胞外からのCa^<2+>の流入がMAPKKKファミリーの一員であるASK1を活性化し、これが下流のMKK4を活性化することにより誘導されることが示唆された。一方、p38の活性化の機構は、JNKの活性化の場合とは異なることが示唆された。現在、細胞外Ca^<2+>からASK1の活性化に至るまでのシグナル伝達機構と、p38の活性化機構及びJNKやp38活性の下流で引き起こされる生物学的事象について検討中である。
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