研究概要 |
神経細胞移植は究極の脳治療と期待されながら,現在の技術では神経線維伸長が不可能なために神経回路を再構築できない.脳内の移植神経細胞や神経線維の移動と伸長を制御することにより神経回路を再構築して脳機能回復をめざし,以下の研究を行った. (1)神経線維のガイドとなる強磁性ナノ物質および表面加工技術の開発と脳移植 脳内に注入した際に毒性が無く,磁場によって容易に配列する強磁性ナノ物質(ナノワイヤ)を18年度に開発した.すなわち,有機化合物アンカーを結合させて神経接着性に優れるポリ-L-リジン結合ナノワイヤの安定した製造が可能になったので,本年度はこの神経接着機能を持つナノワイヤとともにラット胎児由来神経細胞を脳卒中ラット脳に注入して神経回路の再構築を行った.その結果,ナノワイヤの注入部位に沿って移植胎児神経細胞を分布させることが可能となった. さらにナノワイヤと抗マウスIgG Fc抗体を結合し,それに神経線維制御蛋白へのマウスIgG抗体を接合させて特異的な機能を附加したナノワイヤの制作に着手した. (2)強磁性ナノ物質を神経組織内で整列させるための超高磁場制御技術の開発 強磁性ナノ物質を整列させるための磁場発生・制御技術の開発をすすめた.10テスラ磁場を用いて脳内でナノワイヤを目的の位置に移動させる技術を開発中である.脳表面に永久磁石を置いた場合には脳内ナノワイヤが脳室壁に沿って,また一部は脳実質内を移動可能であることを確認した.
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