研究概要 |
本研究では,電気化学反応によって細胞接着を操作する技術「電気化学バイオリソグラフィー」を3次元構造体への細胞接着の操作へ拡張し,細胞培養担体(スキャホールド)内部への異種細胞から成る反復構造の作成にチャレンジする。 本年度は,チューブ状の構造体の内部に細胞を配置する技術としての可能性を検討した。具体的には,シリコンチューブ内壁の任意の部分に細胞接着を誘導する試みを行った。ステンレスの針を電極とし,25mMの臭化カリウムを含む電解液を満たしたシリコンチューブに突き刺した状態で臭化物イオンの酸化電位を印加し,チューブ内壁の改質を行なうことに成功した。針電極を抜いた後は,液漏れは認められなかった。また,細胞を局所に固定した後に,それ以外の領域を細胞接着性に変化させる手法も編み出したので,チューブ内に二次元の共培養系を造り出せるようになった。繊維芽細胞と肝細胞の共培養,繊維芽細胞と血管内皮細胞の共培養,血管内皮細胞同志の共培養が出来ることを確認した。 従来の細胞パターニング法の殆んどは"平坦な基板"のみを対象とし,また,細胞接着領域を"予め"作製するものであった。それに対して本研究では,電極で産生した酸化剤が拡散して基材表面を改質するため,3次元構造体への適用が可能となり,血管のモデルとして有望なチューブ場のスキャホールドの内部に細胞の共培養系を作りこむことが出来るようになった。19年度は,この新しい培養系を用いて,血流に似た力学刺激がかかった状態で細胞動態を観察する試みに着手する予定である。
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