本研究では、一つの細胞からDNAを切断することなく取り出し、顕微鏡下でオプテイカルマッピングを行い、探索したい塩基配列の有無、存在する場合はどの位置にあるかを迅速に明らかにするという解析手法の確立を目指している。具体的には超好熱始原菌をもちいて本手法の有用性を示すと共に超好熱始原菌研究に有用な情報を提供する事を目指している。これに引き続き、ゲノム上でマッピングされた興味ある対象配列部位を顕微鏡下で単分子回収し、ベシクル内を反応場とした単分子生化学反応を行う実験システムを構築することにも着手し、ベシクル内でのDNA生化学反応を単分子レベルで制御・モニタリングできるという微少スケールの生化学実験系の構築を目指す。 本年度は、超好熱始原菌KOD1株のゲノムDNA(全長約680um)に対し、断片化させることなく単分子オプティカルマッピングを行うことを目指し、研究を進めた。KOD1ゲノムDNAを浸透圧ショックによる細胞破壊で取り出した後、蛍光標識オリゴPNAプローブを導入して複製開始領域の特定塩基配列部とPNAとで三重鎖を形成させ、ゲノムDNA分子を光ピンセットで伸展させてオプティカルマッピングを行った。オリゴPNAプローブは、KOD1ゲノムDNAの複製開始領域を認識するようにデザインし、蛍光標識にはQdot用いた。実験の結果、一部伸展されたDNAの鎖上にQdotの輝点を確認する事に成功した。現在、この結果をまとめた論文の投稿準備中である。
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