研究概要 |
本課題の研究対象である電界集中を用いたエレクトロポレーションとは,細胞径の数分の1程度の大きさの微細オリフィスを持つ絶縁性薄膜の作る電界集中を用い,オリフィス上に吸引固定された細胞にパルス電界を加えることによりオリフィスに接した細胞膜のみに可逆的膜破壊を起こし,細胞内に物質導入を行う手段のことである。われわれの過去の研究によれば,特に高周波により変調されたパルス電圧を用いることにより,細胞の大きさ・形状・配向によらず,再現性よく物質導入が行えることが示されている。 本年度の研究においては,波高値1-2V,変調周波数50-500kHz,パルス幅30ms程度のパルスを用い,主に哺乳類細胞を対象として実験を行い,次の結果を得た。 1.パルス電圧を印加した時の一過的・可逆的膜破壊の開口時間を,蛍光色素の導入から求めたところ,数分間のオーダーであることが判明した。 2.蛍光性タンパクGFPの導入を行い,数十kDの分子量のものでも本法により導入可能であることを示した。 3.蛍光性タンパクをコードしたプラスミドの導入を行つたところ,導入2〜3日後にその発現が確認された。 4.微小流体回路を用い,複数の蛍光物質の逐次導入を行ったところ,上記開口時間の範囲内なら2番目以降はパルス印加なしに,またその範囲外であっても更にパルス印加をすることにより,導入が可能であることが判明した。 5.パルス印加後の細胞の経時観察を行ったところ,パルス印加は細胞の生存性・活性に影響を与えず,通常の細胞同様に増殖することが判明した。 6.オンチップエレクトロポレーションのためのオリフィスおよび微小流体回路を一括で作製するための,斜め露光という新手法を開発した。
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