本研究では、単一細胞の分子応答や力学刺激応答をサイト選択的に多元分析する「マイクロチップ型分析システム」の構築を目指している。本システムでは、レーザー光によって遠隔制御される「フォトニック流体制御素子」によって、細胞の特定部位に試薬を注入し、細胞の局所反応計測および反応物質の抽出を実現する。本年度は、以下の具体的項目について研究を行った。 (1)光駆動マイクロポンプの開発と駆動実証 2光子マイクロ光造形法を用いて、2種類の光駆動マイクロポンプを作製した。1つは、容積変化を利用するローブロータ型マイクロポンプである。2つのローブロータ(直径10μm)を同期光トラッピングによって噛み合い駆動させて、1pL/分以下の超微量液体輸送を実現した。さらに、μ領域で顕著となる粘性力を利用したマイクロポンプを考案・試作した。この新型マイクロポンプでは、単一のディスク型ロータ(直径:層10μm)をU字型マイクロ流路に内蔵させた構造となっている。有限要素法に基づくマイクロ流れ解析によって、流路形状の最適化を行い、ディスク周辺の粘性を高効率に流体の駆動力に変化させる形状を決定した。実際に、2光子造形によってマイクロポンプを試作し、駆動検証実験を行った結果、解析結果とよく一致する結果を得た。このポンプは、脈動が全くなく、生体試料をダメージ無く輸送できるという特長がある。 (2)光硬化型PDMSによるマイクロ可動機構の作製 細胞分析に使用可能なマイクロ可動素子を作製するために、生体適合性に優れたポリジメチルシロキサン(PDMS)を材料に用いて、3次元マイクロ立体構造を形成する実験を行った。その結果、約400nmの線幅で任意の立体構造を形成可能な材料を作製できた。さらに、この光硬化型PDMSを用いて、マイクロロータを作製し、光回転駆動させることにもう成功した。また、マイクロ流路の内部に、マイクロピンセットやロータを一体造形することにも成功した。
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