研究課題
本研究では、単一細胞の分子応答や力学刺激応答をサイト選択的に多元分析する「マイクロチップ型分析システム」の構築をめざした。本システムの特徴は、マイクロポンプやバルブなどの流体制御素子をレーザー光によって遠隔駆動させることである。このシステムは、マイクロアクチュエータを内蔵させる必要がないため、バイオチップ自体を小型で安価に製造できるという特徴がある。本年度は、レーザー照射によって高速回転駆動するヘリカルロータマイクロポンプの設計・試作を行った。直径4μmの円筒内部に螺旋状のブレードを内蔵させたヘリカルロータを設計し、レーザー光による光の放射圧によって回転トルクを高効率に発生させることに成功した。このヘリカルロータは300rpm以上で高速回転することを実験的に確かめた。さらに、このロータをU字型マイクロ流路に内蔵させたマイクロポンプを設計した。このポンプでは、回転するロータの周囲に生じる粘性力によって液体を輸送する。設計では、最大流量が得られる形状を有限要素法に基づく流体解析によって決定した。実際に、2光子マイクロ光造形法によって、マイクロポンプを試作し、駆動検証実験を行った。その結果、pL/分オーダの超微量液体輸送が実現できていることが確認できた。また、光駆動流体制御素子の複数・同時駆動をめざして、空間光変調素子を用いた多点同時光トラッピングシステムを構築した。複数の微粒子を同時に捕捉し、自在駆動させることに成功した。今後、このマルチトラッピングシステムを用いて、より高度な光制御バイオチップの研究開発を行う予定である。
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