研究課題
細胞や細胞内小器官は生体膜によって外部から区画されることでその機能を維持している。従って、膜穿孔のようなトポロジー変化をも伴う膜の形態変化は、外界と物質や情報を交換する際に有益に働く可能性がある反面、恒常性を失わせて細胞に死をもたらすことにもなる重要な現象である。実際、自然免疫系の主力の1つ、抗菌ペプチドの多くは病原微生物に対して膜穿孔活性を示す。また病原体の方も、免疫系や宿主細胞の食作用から逃れるために膜穿孔能を持つ毒素を産生するものが存在する。本研究では、人工脂質膜小胞(リボソーム)の水溶液中における動態挙動を光学暗視野顕微鏡で直接リアルタイムで観察する系を用いることによって、細胞膜とアクチン系細胞骨格とを架橋することで知られるBand 4.1 Super familyに属する一群の蛋白質がリボソームに膜穿孔を引き起こす現象を解析した。その結果、1)これらの蛋白質が膜穿孔を引き起こすためには、これらの蛋白質が膜結合ドメインであるFERMドメインに加えて、蛋白質問相互作用に必要なC末端領域も必須であること、2)同じBand 4.1 Super familyに属する非常によく似た蛋白質同士であっても、膜穿孔活性の強弱、塩強度依存性、コレステロール感受性に違いがあり、この相違が各蛋白質の同士間相互作用の性質に依存するらしいこと、が明らかとなった。以上は、膜の表面での蛋白質の重合凝集が、膜穿孔に繋がることを示している。得られた結果は、膜穿孔現象を利用してリボソーム内に蛋白質などの物質を封入する際の重要な知見となる。また蛋白質をリボソーム内に封入するための別法として京大吉川研究室のエマルジョン法の利用も試みている。この手法によって充分濃度のアクトミオシン系を封入出来ることが確かめられた。これにより、リボソームを用いた運動性人工細胞の構築に突破口が開かれたといえる。
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Summarized Report of Symposium on "System Cell Engineering by Multi-scale manipulation" at MHS2006&Micro-Nano COE Symposium 2006 Annual Report of "System Cell Engineering by Multi-scale Manipulation"
ページ: 64-69
J. Mol. Biol. 362卷
ページ: 403-413