本研究の目的は、「細胞に優しい」赤外レーザと熱ショックプロモーターを利用して、モデル動物である線虫C.elegansにおいて「いつでも、どこでも、簡単に」目的の遺伝子(産物)の発現を制御する実験系を確立することである。本年度は以下の成果を得た。 1)赤外レーザ照射条件の適性化 熱ショックプロモーター下流にGFPをつないだトランスジーンを持つ線虫系統において、表皮細胞の一種であるseam cellを対象に照射実験を行った。レーザ出力と照射時間を系統的に変化させて、照射による熱ショック反応の誘導効率および赤外レーザ照射が細胞にあたえる影響を調べた。その結果、1秒〜60秒の時間範囲で、熱ショック反応を50%以上の効率で誘導できる条件が存在することがわかった。これらの条件下ではseam cellは照射後に正常に分裂し分化し、照射が細胞障害を引き起こさないことがわかった。 2)検出系の改良 hsp16.2::EYFP、hsp16.2::EC:FPを構築し、これを持つトランスジェニック系統を作成した。 3)誘導可能な遺伝子発現抑制系の開発 赤外レーザ/熱ショックプロモーターによりヘアピン構造のRNAを発現させて遺伝子発現を抑制することを試みた。ヘアピンRNA発現用ベクターとしてWormgate2を利用してGFP発現系統でのgfp (RNAi)を試みたが、GFP蛍光は減少しなかった。GFP蛋白質の安定性が高いため一過性のdsRNA発現によって蛋白質量が減少しなかった可能性がある。そこで不安定化GFP発現系統での再実験をおこなっている。
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