人工モデル細胞構築技術へ資するため、組換え膜蛋白質複合体提示したバキュロウイルス(AcNPV)と人工ベシクルとの融合技術を基礎に、情報伝達に与る膜蛋白質複合システムを巨大リポソーム膜へ再構成する方法を確立することを目的とした。18年度は、野生型出芽ウイルス出芽エンベロープ(BV)と巨大リポソーム(GUV)との融合の基本条件を明らかにしている。本年度の研究では、この条件を利用して「古典的」な情報伝達系をモデルに選び、その構成膜蛋白質を巨大リポソーム膜へ再構成すること、即ち巨大プロテオリポソームを作製することを、実験目標として計画した。そして、(1)各蛋白質(受容器であるアドレナリンβレセプター、CRFレセプター、TSHレセプター等のGPCR;伝達器である促進性G蛋白質各サブユニット;効果器としてアデニル酸シクラーゼ)の遺伝子を導入した組換えバキュロウイルス(AcNPV)を作製し、(2)各組換えAcNPV出芽ウイルス(BV)の精製とWB・酵素解析による各蛋白質提示の確認を行い、そして(3)BV-GUV融合によるプロテオリポソーム化を共焦点顕微鏡単一GUV解析により確認した。特に(3)においては、GUV膜上における各膜蛋白質構成因子の存在を、抗GPCR抗体、蛍光標識GTPアナログ、及び蛍光標識フォルスコリンによる特異的蛍光染色により慎重に確認しており、これによって上記の目標が達成されたと思われる。本研究でモデルとしたGs共役系は、再構成をはじめ研究に歴史があり知見が抱負である。したがって、下流伝達経路のさらなる構築や、情報伝達機能のアッセイ手法の改良が可能であると期待される。
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