研究概要 |
本研究は,ディッシュに培養した細胞を顕微鏡下で観察しながら,タンパク質分解酵素を用いずにターゲットの細胞のみを回収する技術の開発を目的としたものである.この方法では,下限臨界共溶温度(約33℃)以下で水溶性を示す温度応答性化合物をコーティングしたディッシュに細胞を培養し,ターゲット細胞の直下の狭い領域のみを冷却して,脱着した細胞をマイクロピペットで吸引する.本年度は吸引システムへのマイクロバルブの導入,マイクロピペットのアルブミンコーティングなど装置の改良を行った後,上記のディッシュに播種後18時間培養したマウス線維芽細胞3T3の回収実験を行った.また,回収した細胞を顕微鏡下で長期間培養してその様子を観察して以下の成果を得た. 1.細胞または細胞塊を10秒以内で確実に回収できるようになった. 2.複数個所からの連続回収が容易に行えるようになった. 3.回収した細胞の再培養実験から,(1)細胞が再び付着伸展すること,(2)相互接着した細胞は接着を保ったまま再播種できること,(3)再培養した細胞が再び分裂すること,を明らかにし回収による細胞のダメージがないことを証明した. 4.赤と緑にそれぞれ蛍光染色した細胞を2種類の細胞とみなし,片方だけに純化するデモンストレーションを行った. この結果,当初の目標を全てクリアして「培養細胞の顕微鏡下その場観察選別回収法」を確立した.
|