平成18年度は、次の2つの項目について研究を行った。 まず、人工開口放出系の手本となる、マスト細胞の開口放出(エクソサイトーシス)に最低限必要な蛋白質の特定とその再構成リボソームの作成である。もう一つは、人工エクソサイトーシス系の脂質成分からなる構造基盤である、細胞サイズのリボソームに分泌小胞サイズのリポソームを内包させた系の開発である。 (1)マスト細胞の開口放出に必須な膜融合タンパク質の特定 マスト細胞には開口放出にかかわるタンパク質として、細胞膜にt-SNAREとしてSNAP23、syntaxin3および4が、分泌小胞膜にv-SNAREとしてVAMP7および8が発現していることが知られている。今回、これらのタンパク質を大腸菌で発現させ、精製単離して、それぞれのタンパク質をリポソームに再構成した。Syntaxinが2つVAMPが2つあるため、組み合わせとして可能な4通りの実験を行った。その結果、SNAP23、syntaxin3、VAMP8が最も膜融合効率が高いことが明らかとなった。 (2)小リポソーム内包大リポソームの開発 細胞サイズのGiant liposomeの作成は、Yamazakiらの方法によって行った。また、小リポソームは、定法に従って作成した。その結果、giant liposome内に、小リポソームを内包したものを調製することに成功した。大リポソームとしては直径が10μm、小リポソームについては、サイズにばらつきが大きかった。今後は、エクストルーダによってサイズをそろえて大リポソームに内包させる。また、小リポソームに水溶性の蛍光色素をロードしたものを内包させることにも成功した。したがって、今後はCaイオノフォア刺激によって実際に開口放出を誘導する試みを行う。
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