研究概要 |
尿流を感知するメカノセンサーとしての機能を持つ細胞小器官と考えられている尿細管一次繊毛は,多発性嚢胞腎など様々な病態に関わっているとされているが,その力学的特性については充分明らかになっていない。本研究においては,個々の一次繊毛を光ピンセット法によりin situで捕捉し微小応力を加え,一次繊毛単体の力学的特性について検討した。一次繊毛は細胞上面に垂直に伸びるように存在するため,通常の観察方法では可視化できない。しかし,我々はflexible substratum method(JCS89,457,1988)を応用することにより,一次繊毛をリアルタイムで可視化した。すなわち,60mm培養皿内に薄いflexible plastic sheetを作成し,腎尿細管上皮細胞をplastic sheet上で約5〜7日間培養した。その後plastic sheetを折曲げ顕微鏡下に固定し,培養細胞の側面観察を行うことにより一次繊毛を観察した。また,我々の構築した光ピンセットシステムにより,微小ビーズを一次繊毛先端に付着させ捕捉を試みたところ,個々の一次繊毛にピコニュートンレベル以下の微小応力を加えることが可能で,一次繊毛の力学的特性を検討可能であった。本方法は細胞上面の細胞膜に影響を与えずに,一次繊毛という細胞小器官単体に特異的に機械的刺激を加えることが可能であり,個々の一次繊毛の力学的特性を検討するのに有用と考えられた。
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