本研究は、大規模ネットワークから有益な知識を抽出するための可視化技術の開発を目的とする。大規模ネットワークからの知識抽出においては、ネットワークの構造的特徴の把握が重要であり、そのような特徴の把握を効率化するためには、ネットワークに対する「観点」の導入が有効である。本研究では、一部のノードに位置の制約を課すことでネットワークに観点を導入する。具体的には、2部グラフで表現されるネットワークに焦点を合わせ、2種類のノードの一方に位置の制約を課した描画スタイル(「アンカーマップ」と呼ぶ)の描画手法を開発する。 本年度は、下記の課題に取り組んだ。 ●アンカーマップの可読性基準の定式化 ●アンカーの配置決定法の開発 ●フリーノードの配置決定法の検討 アンカーマップの可読性基準の設定に関しては、一般的に採用されている可読性基準に加えて、アンカーマップに適した可読性基準を検討し、定式化を試みた。アンカーの配置決定法の開発としては、可読性基準の代りとして使える数値指標を検討し、その有効性を評価するための実験を行った。フリーノードの配置決定法としては、制約付きスプリング埋め込みモデルを基本とし、エッジに対応するスプリングのパラメータの決定法を検討した。 アンカーの配置決定用に検討した数値指標の有効性評価に関しては、国際会議HCI International 2007にて「Visualization Techniques for Drawing Bipartite Graphs」という表題で発表予定である(受理済み)。またアンカーマップの利用に関して、第四回知識創造支援システムシンポジウム(2007年2月22日〜24日)にて「アンカーマップによるネットワーク情報の俯瞰」と題して発表した。今年度開発したプログラムは2部グラフを入力データとして、アンカーマップを自動レイアウトするインタラクティブなプログラムのデモンストレーション(Java Applet)として、下記URLにて公開している。 http://www.iplab.cs.tsukuba.ac.jp/.misue/kaken/kaken2006-tokutei/
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