研究概要 |
腸管寄生原虫赤痢アメーバの貪食とシステインプロテアーゼ(CP)輸送の分子機構を解明し、寄生体の病原機構におけるメンブレントラフィックの役割と特殊性を明らかにすることを目的に研究を行った。本年度は特に、これまでのトランスクリプトーム・プロテオーム解析の結果により明らかとなった、病原性に強く相関すると予想されたRabのうち、Rab11Bの局在・動態・機能解析を行った。また、赤痢アメーバにおけるオートファジーの分子機構を明らかにすることを目的としてエピトープ標識を付加したAtg8を発現した原虫を作製した。デキストランとの共局在を調べたところRab11Bはエンドサイトーシス経路に局在せず、リサイクリングエンドソーム或はデノボ合成されたタンパク質の分泌に関与していることが示唆された。Rab11Bの大量発現によって、細胞内のCP活性、及び分泌されたCP活性はそれぞれ2.5倍、15倍上昇した。CPの分泌の亢進はCPの種類に依存しておらず、赤痢アメーバ内の主要なCPであるCP1,CP2,CP5のいずれも上昇していた。このCP分泌の亢進は哺乳動物および酵母で分泌を阻害するbrefeldin Aにおり相殺されないことから、赤痢アメーバにおけるCP輸送は通常のArf-GEFによって触媒される輸送経路とは異なる、赤痢アメーバに特異的な経路によって輸送されていることが示唆された。Rab11Bの大量発現によりCP分泌が亢進するのに伴い、CHOモノレイヤーの破壊が大きく亢進した。以上の知見は「感染における病原体小胞輸送の病原機構での役割」を示す一つの貢献である。
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