研究概要 |
ER exit sites(ERES)は、小胞体(ER)からゴルジ体へ向かう輸送小胞の形成プラットフォームである。われわれは先行研究により、膜タンパク質であるYip1AをERESのマーカー膜タンパク質とし、M期におけるERES構造体分解の制御機構を明らかにしている。しかし、本研究実施の過程で、Yip1AはGFP-tag依存的にERESの存在し、多くはゴルジ体に局在化することを発見した。そこで、本研究では、ゴルジ体におけるYip1Aの機能探索を中心に研究を進めた。そのため、小胞体-ゴルジ体間の小胞輸送(順行輸送と逆行輸送)をゴルジ体に局在化するGT-GFP(ガラクトシルトランスフェラーゼのGFP融合タンパク質)をプローブとしFRAP法を用いてそのキネティックスを含めて定量的に解析する手法を構築した。次に、セミインタクト細胞内で細胞質依存的に生起する小胞体→ゴルジ体間輸送(順行輸送)とゴルジ体→小胞体間輸送(逆行輸送)素過程を分割してアッセイする方法を構築した。次に、Yip1Aの細胞質ドメインのペプチド領域(N末から1-109番目)及び(1-65番目)部分のGST融合タンパク質を調製し、細胞質とともにセミインタクトCHO細胞に加えて順行・逆行輸送アッセイを行った。その結果、興味深いことに、逆行輸送のみがそれらペプチドにより有意に阻害されることが判った。これは、Yip1Aの細胞質側ドメインが細胞質またはゴルジ体表面の輸送装置に作用して、ゴルジ体からのGT-GFPの逆行輸送を競争的に阻害したことを意味する。この他にも、この細胞質ペプチド領域は、VTC/ERGICからのp58の逆行輸送を阻害しなかったこと,RNAi法によりHeLa細胞の内在性のYip1AをノックダウンするとShigatoxinのエンドソーム→ゴルジ体→小胞体の逆行輸送が阻害されることなどから、Yip1Aはゴルジ体からのCOPI依存的な逆行輸送に関わることを示唆する結果を得た(論文投稿中)。
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