研究概要 |
ゴルジ体は、小胞体で合成された分泌タンパク質の加工・修飾を司る細胞小器官であり、また分泌タンパク質の輸送・ソーティングの制御中枢でもある。細胞分化や環境変化などによって分泌タンパク質の合成が盛んになりゴルジ体の機能を増強する必要が生じると、ゴルジ体が著しく発達してくること(ゴルジ体ストレス応答)が知られている。ゴルジ体の機能を担う遺伝子は核にあることから、このような応答を起こすためには、ゴルジ体から核にシグナルが送られて核内の遺伝子の転写が誘導されていると想像されるが、その分子的実体はほとんど明らかになっていない。本研究においては、このようなゴルジ体ストレス応答の分子機構を明らかにすることをめざしている。これまでに先行研究によってゴルジ体ストレス応答によって発現が誘導されてくる遺伝子を複数同定したが、その中にSTX3AやVAMP1, RAB20, SEC24D, SEC22L1, SEC61Gなどトラフィック因子の転写が誘導されることを見いだした。今年度は、STX3Aのプロモーター領域を単離し、ゴルジ体ストレス応答による転写誘導を制御する領域を解析した。現在、系統的な欠失変異体を作製し、それぞれの転写誘導能を調べているところである。また、ゴルジ体ストレスによって転写が誘導される遺伝子としては、トラフィック因子の他に脂質合成酵素の遺伝子がある。脂質合成酵素のひとつHMGCR遺伝子についてプロモーター解析を行ったところ、その転写制御配列(MRE)をほぼ決定することができた(25塩基)。驚いたことに、MRE配列は、コレステロール欠乏によるHMGCR遺伝子の転写誘導を制御するエンハンサーとして知られているSRE配列とは全く異なる配列であった。今後は、MREに結合する転写因子について解析を進める予定である。
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