研究概要 |
α-Klotho(I型膜蛋白)は腎遠位尿細管、上皮小体、脈絡膜で発現し、これらの組織の細胞内に多量に存在し、その一部はNa+,K+ATPaseと結合していた。抗α-Klotho抗体による免疫沈降と質量分析によって野生型脈絡膜からは沈降するが変異マウスの脈絡膜からは沈降しない蛋白の同定を試み、結合蛋白の一つとしてNa+,K+ATPaseを見いだした。また、逆にNa+,K+ATPaseのα1-subunitに対する抗体で免疫沈降するとα-Klothoが共沈することがわかり、α-Klotho蛋白がNa+,K+ATPaseと結合していることを確認した。更に、この結合は腎臓、上皮小体においても確認された。脈絡膜におけるNa+,K+ATPaseの活性(K+の細胞内への輸送をミミックする86Rbの取り込み量を解析)、及び細胞表面量(特異的リガンドである3Hウアバインの結合量を測定)を解析し、細胞外カルシウム濃度の低下に素早く応答してNa+,K+ATPaseの細胞表面へのリクルートが誘導され、Na+,K+ATPaseの機能が亢進することが示めされた。しかし、α-Klothoノックアウトマウスの脈絡膜ではこのような応答は観察されず、この応答はα-Klothoに依存していた。また、α-Klotho蛋白は膜貫通ドメイン近傍で切断されて分泌されるが、Na+,K+ATPaseの細胞表面へのリクルートとα-Klotho蛋白の分泌が同時に起こり、相関していた。さらに、α-Klotho・Na+,K+ATPase複合体はER,Golgi体で観察され、Early Endosome分画(おそらくrecycling endosome)に蓄積していた。これらの事実は細胞外のカルシウム濃度が低下すると、その低下を細胞表面に存在するセンサー分子が感知し、そのシグナルがα-Klotho・Na+,K+ATPase複合体,あるいは複合体を持っ分泌顆粒に伝わり、α-Klotho蛋白の膜貫通ドメイン近傍での切断、Na+,K+ATPaseとの解離がおこり、Na+,K+ATPaseの細胞表面へのリクルートとα-Klothoの分泌がおこることを強く示唆している。
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