研究概要 |
細胞内侵入能を有するA群レンサ球菌や黄色ブドウ球菌は,細胞への侵入直後はエンドゾーム内に存在するが,その後速やかに細胞質に脱出する.しかし,脱出した細菌はオートファゴゾームに捕獲・分解され,細菌の細胞内増殖はオートファジーにより抑制される.これまで我々が示したこれらの知見は,オートファジーは宿主自然免疫機構の一端を担っていることを示している.しかし,オートファジーが細胞質内細菌を感知するメカニズムについての詳細は未だ知られてはいない,そこで我々は,オートファジーの誘導に関わる細菌因子,およびオートファジーの誘導に関わる細胞因子の同定を進めている. (1)オートファジーを誘導する細菌因子の検索 トランスポゾンTn916にてA群レンサ球菌に形質導入を行い,遺伝子破壊株ライブラリーを構築した.この変異菌ライブラリーを用いて,2200株から,細胞侵入後もオートファジーを誘導しない2変異株を分離した.これら変異株では菌体の細胞壁合成が変異していることが確認され,オートファジーの誘導には細菌の特定の細胞壁成分が必要であることが示された. (2)オートファジーを誘導する細胞因子の検索 宿主細胞質内には,細菌性因子を認識し自然免疫に寄与する機構が存在する.その中でもNod-like receptor(NLR)系は,細胞質内の微生物認識機構として注目を受けている.そこで,この機構における機能分子の網羅的ノックダウン系を構築し,A群レンサ球菌によるオートファジーの誘導を制御する分子を検索した.その結果,ヒトでは20種類以上存在するNLRのうち,特定の2分子がオートファジーの誘導を制御していることが示された. 以上の結果から,細胞質内に侵入したA群レンサ球菌は,宿主細胞内に存在する微生物認識機構により認識を受けオートファジーを誘導することが示された.
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