本年度は、リサイクリングエンドソームの細胞内膜輸送に於ける意義を検証する一連の研究の中で、特に毒素に代表される逆行性膜輸送について検討を行った。蛍光標識したコレラ毒素を調製し、COS-1細胞(Green Monkey Kidney Cell)に取り込ませ経時変化を解析したところ、細胞膜→初期エンドソーム→リサイクリングエンドソーム→ゴルジ体→小胞体という一連の流れが明らかとなった。リサイクリングエンドソームの必要性を検討するため、低温処理(20度処理:トランスゴルジネットワークからの分泌経路の抑制が起こることが知られている)、AIF処理(トランスフェリンのリサイクリングエンドソームからの膜輸送を抑制)下でコレラ毒素の取り込み経路を追跡したところ、両条件下で、毒素はゴルジ体に到達できなくなり、リサイクリングエンドソームに蓄積することが明らかとなった。更に、トランスフェリン-HRP/DAB/過酸化水素水処理によってリサイクリングエンドソームを特異的に不活化した条件下でも、コレラ毒素はリサイクリングエンドソームから脱出できなくなることが明らかとなった(投稿中)。この結果は、逆行性膜輸送経路においてリサイクリングエンドソームが必要不可欠な役割を果たしていることを示すとともに、初期エンドソームからゴルジ体へ直接輸送される膜輸送経路がないことを意味するものである。近年の分泌経路におけるリサイクリングエンドソームの役割を考慮すると、リサイクリングエンドソーム上には想像以上に複数の膜輸送経路が交差していることが容易に考えられる。どのように、その膜輸送経路が制御されているのか?が次の大きな課題になるであろう。現在進行中のrabタンパク質の網羅的スクリーニングから幾つかのrabタンパク質がリサイクリングエンドソームに特異的に局在することが判明したので、これらのリサイクリングエンドソームレジデントタンパク質の動態を解明することで、上述の課題に挑戦していきたい。
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